浅草のアトリエ

PROJECT DATA

所在地: 東京都台東区今戸

用途: 共同住宅(改修)

構造/規模: 鉄骨鉄筋コンクリート造

建築面積:

延床面積: 45.86㎡(専有部)

竣工年: 2025

協力: 施工:渡辺富工務店 / 撮影:神宮巨樹

都市型狭小住宅のプロトタイプ / 小さく豊かに暮らす

浅草にある築古マンションの一室(約45㎡)を、アトリエ兼住宅に改修した計画である。都市型狭小住宅のプロトタイプとして、”小さく豊かに暮らす”ため、主に以下の3点を意識した設計としている。

1.機能の複合化
一般的な住機能によって部屋を分けるのではなく、空間の質(静的/動的)によって機能をまとめ、生活に必要なスペースを整理した。アトリエの中央には造作キッチンを大きく設え、食事、談話、作業、打ち合わせ等、様々な営みが共存しながら自然と展開される場としている。

2.空間の連続化
L字の間取りを活かし、空間を連続的に形成することで奥性を喚起し、実面積以上の広がりを感じさせる構成とした。玄関からベランダまで連続する壁面一体の家具収納、アール壁面のくびれによる空間の分節、梁を見せない曲面の天井照明等によって、緩やかに空間を分けながらも一体的な計画としている。

3.深度のある素材選定
素材選定においては、面的な仕上ではなくムラや揺らぎのある素材を積極的に採用し、境界性を曖昧にする効果を生み出している。メインの壁は漆喰のコテ仕上げとすることで、職人の手仕事によって不均一な質感を持つ。また、キッチンの背面には黒皮鉄を採用し、製造過程で自然発生した酸化被膜の縞模様が空間に深度を与える。リビングの天井部には、鉄粉が混ざった塗装に反応剤を塗布することで本物の錆を発生させ、空間に潜在的な広がりを生み出している。

最後に、首都圏の不動産価格は高騰を続けている。特に東京都23区内では新築マンションの価格は著しく上昇している。こうした市場環境を踏まえ、住宅取得に伴う多額ローンへの負担軽減、事業開始にかかる初期費用の抑制、交通利便性の高い立地等、複合的な要因を踏まえた結果、都心の築古の小規模マンションを購入・改修する選択をした。

限られた面積と予算の中で、改修費の抑制を図るため、便所、浴室は既存利用とし、床仕上げもフローリングを増し貼りで対応するなど、解体範囲を最小化するように計画を行った。これにより、予算や工期を縮減しながら、空間構成や素材の選定に重点をおいた計画が可能となった。

掲載:TECTURE